花を楽しむ、なごみの宿

季譜の里 季譜の里

コラム
2016.02.06  コラム

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ふわっと白く濁った食堂の曇窓。
ドアの隙間からほんのりの漂ってくる鰹出汁の香り。
それは私達にとって、「あぁ、今日は木曜日か」と
知らせてくれるシグナルでもあります。
何故なら、私達にとって木曜の賄いと言えば、「うどん」だから。

食堂の奥にある大きな金属鍋。
その蓋を取ると、ぐつぐつと煮えた湯の中に てぼ が3つ入れてあります。
うどんを食べる時の楽しみのひとつが、
この てぼ(麺を茹でるざる) で麺をを好みの固さに仕上げること。

茹ですぎない程度に湯に浸し、
勢いを付けて湯切りをした後、さっと冷水に通し麺を引き締める。
そして、その後に再びお湯で麺を温め直し、
どんぶりに移したら、熱いつゆを注ぎます。

こうする事で、麺の弾力も増し、
あつくておいしいうどんを食すことが出来ます。
この一連の作業を行い、食べる事で、なんだかうどんが
いっそうおいしく感じられるのです。
(おそらく、自己満足なのでしょうが)

さて、当館で代々伝わる『木曜のうどん』。
それはその時々で様々なバリエーションがありますが、
時折変わり種のものがお目見えします。

本日は、煮込んだ具在をかけて食べる、なんだか家庭的なうどん。
シメジ、エノキ、細切りにされた油揚げに、
色添えでカマボコが刻み込まれ、少し甘めに炊かれています。
これをつゆを注いだ麺の上にさっとかけて食べるのですが、
鰹出汁と具在の甘味がほどよく絡みあい、
なんとも言えないまろやかな味に。

この、「何うどん」といったらいいか分からないけど、
素朴でおいしいうどんこそが、『木曜のうどん』の定番。
私達にとっては、おふくろの味、的な存在です。
(作っているのは、調理場のベテラン男性ですが)

しかし、何故、『木曜日』にうどんなのか…。
今ではその真相が分かる者は、残っているとか、いないとか。

2016.02.04  コラム

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旅館業に携わる者にとって、ひとつ楽しみなものがある。
それは、「賄い」。
食と住をお客様に提供する私達は、ある意味大きな家族であり、
「賄い」は毎日の活動力の源になるものでもある。

そんな、とある日常の一コマをお届けする【本日の賄い】シリーズ(?)。
第一回目は『デミカツ丼』だ。

あたたかいご飯の上に適度な大きさに刻まれたレタスを敷き、
その上にドンっとカツを乗せ、デミグラスソースをたっぷりとかける。

見た目の存在感の強さが表す通り、
その味とボリュームにはドシっとしたパンチがあり、
食べる度に、旨さとこってりさが味覚と満腹中枢に
ボディブローの様に効いてくる。
この料理は一体…どこで生まれたのだろうか?

その歴史は昭和6年に遡る。
岡山市の料理店「味司野村」。今ここはカツ丼の名店として知られているが、
その創業者である野村佐一郎氏が、東京のホテルで修行中にデミカツ丼を
考案したのが始まりだ。

後にそのメニューが評判を呼び、近隣の大衆食堂や喫茶店などでも
同様の料理を提供しはじめ、いつしか岡山市中心市街地では
多くの店がデミカツ丼を出す様になった。

なお、デミカツ丼を古くから提供している店は、これを単に
「カツ丼」としてメニューにしており、通常の卵とじのカツ丼も
おいてある場合は「卵とじカツ丼」、「卵カツ丼」、
「カツたま丼」などの名称を用いている。

最近デミカツ丼をメニューとした店では、
デミカツ丼は「デミカツ丼」の名称で提供する場合もある。
加えて驚くべき事は、岡山市内の多くのラーメン店では
これをラーメンとのセットメニューで提供している事だ。

ラーメン店でデミカツ丼が提供される理由として、
その出汁がデミグラスソースのベースとして応用できる事。
そして、それが大衆食として定着していた事が考えられる。
サイドメニューとして適切な存在だったのだ。

更に、当時の人気ラーメン店が提供し始めた為、
対抗して競合店でも提供しだしたという説が一般的とみられている。
湯郷温泉周辺では、見られないメニューだが、
岡山市に赴いた際は、是非その組み合わせを味わってみてはいかがだろうか。