コンセプトは「花を楽しむ、なごみの宿」
女将から学んだ季譜の里
季譜の里には純和風の庭が沢山あります。そこへ数本のたんぽぽが咲いていました。たんぽぽは、言ってしまえば雑草です。きちんとした日本庭園にはそぐわないとも考えられます。それを女将に相談したところ、女将は「これはこのままにしておく方が良い」と言いました。この時、ハッキリとわかりました。この感覚がうちの宿の良さなのだと。
キリッとした中にも親しみがわいてくるような、柔らかさが残るような旅館をつくっていけばいいのだなと、そのときに思いました。
これが季譜の里のコンセプトの源です。
二代目 佐々木毅が始めた町づくり
今の季譜の里が出来たのは、この祖父の存在が大きかったと思います。祖父は写真でも分かるように沢山の花を育てていました。そして旅館だけでなく、湯郷温泉街中の家々やお店に花を贈り、贈った後もそれが綺麗に咲いてくれるようにと、毎日水をやり、世話までしていました。私が小学生の時、祖父は沢山の花を学校にプレゼントしました。そのお陰で私は全校生徒の前で褒められました。全校生徒の前で褒められたのは、後にも先にもこの時だけです。そんな祖父は近所でも有名な花咲爺さんでした。花さえ大事にすれば旅館はなんとかやっていける、私はいつしかそう思うようになりました。
今、旅館業を続けていられるのも、花を大事にする気持ちを持ち続けられているからと思っています。いつか私も湯郷を花でいっぱいの街にしたいと思っています。
季譜の里、今の花咲爺さんたち
黒田幸陽
黒田先生は私の尊敬する人の一人です。少年時代、体の弱かった先生は自然と花の世界に魅了されていったと教えてくれました。中学の頃から池坊へ通い、師に恵まれ才能を引き出してもらったそうです。若い頃は、仕事が忙しく花から離れていた時期もあったそうですが、今でも日々作品を磨く毎日を続けている先生の熱心さに、驚かされることがよくあります。
「社長、どうですか?みてください。これはどう思いますか!?」
とよく聞かれ、新しい試みを沢山教えてくださいます。私も歳をとっても、黒田先生のように探究心を持ち続けて生きていきたいと思います。
住谷弘法
住谷先生との出会いは、一級建築事務所「間工作舎」の小笠原先生のご紹介でした。小笠原先生は自分のデザインよりも住谷先生のお庭をどう楽しめる客室を作るか、お風呂を作るかをとても熱心に私に語ってくださいました。
私と住谷先生、小笠原先生が共通に大事に思っていたのは、自然の中で暮らすということだったように思います。そして、その自然の美しさを感じ取ることの喜びに、人はとても力をもらえるということを学ばせて頂きました。
社長の挨拶
花咲爺さんであり続けること
わたしは、楽園のような会社を作りたいと思っています。(それは、緑に溢れた沢山の花が咲く場所をイメージしていただけたらと思います)。そして、お客様に幸せになっていただくのは当然の事ですが、働いているスタッフもキラキラ輝き、人生を謳歌し、社会人としてしっかりした人間に成長してもらい、世の中の役に立つ人間になってもらいたいです。
また、この1200年続く湯郷温泉が、これからもずっと2000年、3000年と続いて行く湯治場であり続ける事。その二つの夢のために、私はこの地に花を絶やさないよう(花は活けられませんが)自分も先代に引き続き花咲爺さんであり続けることでこの会社を発展させていきたいと思っています。