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地球の歩き方

2026.10.25  旅のコラム

私の本棚の1番下の段には

『地球の歩き方』がずらりと並んでいます。

その数30冊ほど。

1番下にしているのは

この本が普通の書籍に比べて重たいからです。

 

薄い紙にびっしりと印刷された写真と小さな文字。

本の重さは情報の多さに比例しています。

今のようにインターネットがない時代、

旅人の鞄の中にはだいたいこの本がありました。

 

30冊のうちの多くは行ったことのある国ですが、

なかには、いつか行きたいと思っている国、

イスラエル、リビア、ペルーなどもあります。

 

調べてみるとリビアに関しては私が持っている

2010~11年版を最後に改訂版が

発行されていないとのこと。

これは深刻な政情不安から旅行ができる

治安状態にないとの理由からです。

 

ページをめくると

海に面した古代遺跡の写真が

たくさん掲載されており、

とても魅力的な国だけに残念に思います。

 

そのような希少性の高いものは脇によせて、

もう何年も手にとっていない

埃をかぶったものを少し整理しようと思いました。

 

1番古いものは

『フランス‘98~’99年版』。

初めての1人旅であり、

初めての『地球の歩き方』。

 

訪れたパリとリヨンのページは

何度も読み込んだ痕があり、

地図には書き込みも見られ、

ぼろぼろです。

 

この本は『地球の迷い方』などと

揶揄されることがありました。

実際に現地に行ってみると掲載情報と違った

ということが多々あったからなのですが、

リアルタイムの情報が入る今とは違って

1年以上前の取材での情報ですから

致し方ないことかと思います。

 

実際に私もこの時、

空港から市内に出る電車のチケットを購入する際、

記されていた情報にならって

「2等車を1枚ください」と言ったところ

「2等車はもうない」と返されました。

 

ちなみにこのRER B線というのは

注意喚起が出るほど

窃盗や強盗の多発路線として有名です。

節約するのが旅人の証と思いこむ若気の至りから、

そんな危険な移動手段を選んでしまったのでしょう。

 

今は空港から市内まではタクシー1択です。

この最古のフランス版、

表記されている通貨はフランですし、

ガイドブックとしては役に立たないものになりましたが、

あまりにも思い出が多いために

こちらもそっと脇によせました。

 

次に手にとったのは

『バルセロナ‘04~’05年版』。

東京カレンダーという雑誌の取材が終わってから

1人で残って数日を過ごしました。

この時に宿泊したのが

『地球の歩き方』にも載っている

チキートという日本人宿。

 

世界各国にある日本人宿ですが、

宿泊したのはここが初めてでした。

仕事で1泊300ユーロの部屋に泊まっていた翌日に、

30ユーロの部屋に移動です。

 

学生や社会人、

色んなバックボーンの人が宿泊しており、

夜にはリビングで一緒にビールを飲みました。

 

宿はエレベーターのない5階にあったため、

ビールを買いにいくのはもっばら大学生の若者たち。

そしてお金を出すのは社会人。

きっと今、街ですれ違っても

お互いに気づくことはないけれど、

宿の店主に「うるさい!早く寝ろ!」

と怒られたバルセロナの夜は

みんな憶えているはず。

 

整理しようと思って手にとった

『地球の歩き方』ですが、

手にとるたびに思い出が鮮明によみがえり、

この本がガイドブックとしてだけの

役割ではないのだと気がつきました。

 

ちなみに先月、

こちらでフェルメールのことを書く際も

傍らには

『オランダ ベルギー ルクセンブルク‘18~’19版』

がありました。

どうやらもう少し手元に置いておいた方が良さそうです。

 


 

書き手の西山繭子さんはドラマや舞台で活躍中の女優さんです。

父である伊集院静さんの才能を受け継ぎ

独創的な小説やエッセイなども発表されています。

▼西山繭子プロフィール

https://www.flamme.co.jp/actress/mayuko_nishiyama/